切迫早産

~早産は感染でおこる~
[doc] どーもどーもどーも。田中ウイメンズクリニック院長の田中でございます。
前回のマタニティビクスの話はお役に立ちましたでしょうか?
え、もう始めてますって?けっこう、けっこう(笑)

さてと、今月は『元気な妊P』にも『アブナイ妊P』にとっても 欠かせない知識!〃切迫早産〃についてのお勉強です。

まず、早産と切迫早産をごっちゃにしている人が多いようですが似て非なるものなんです。
そこんとこよく知っといてくださいね。
早産っていうのは妊娠22週から37週までの間に 妊娠が中絶することを言うのですが切迫早産っていうのは『このままだと早産になりそうだ!』という状態を指します。(ちなみに妊娠21週より前だと流産とか切迫流産ということになります が…。)
だから、症状の程度や対処によっては切迫早産になったとしても早産にならない場 合もあるわけです。

1.切迫早産とは
 まず事態は、お腹の張り(腹緊)や下腹部の痛み、性器からの出血、破水、 赤ちゃんが下がってきたような感じから始まります。 私たち医師はそんな訴えで検診や診察に来た妊Pのお腹の張りや痛みの程度、 子宮口が開いてないかどうか、出血があるか否か、はたまた破水をしてるかしてな いか等を調べて症状の程度を判断いたします。
切迫早産で入院することになった妊Pの多くは妊娠31週~32週であることが 多いのですが、これは妊娠中の腹緊がその時期にピークを迎えるのと関係ありです 。
腹緊だけが強くて入院した妊Pには、まず安静にしていただきます! そのうちに腹緊の減少期に入って、症状が軽くなることがままありますのでね。 このような場合は退院させて、フツーの生活に戻ってもらってます。 症状がなくなっても安静な生活を続けていると今度は予定日を過ぎても 陣痛がおこらなかったり、それではと陣痛を誘発しても陣痛微弱で分娩時間が長引いたり、やっと産まれても子宮の収縮が悪くて大量出血してしまっ たりと、これまた困ったことになってしまうこともあります。 必要以上の長期安静は全身の筋力と持久力を衰えさせて、 同時に子宮の筋肉の機能を低下させてしまうんです。 切迫早産で入院しても心配な症状がなくなって体調が戻れば退院して頂き、 マタニティビクスなどで適度にカラダを動かして欲しいと私は思いますね !(キッパリ)

けれど、切迫早産はこのようにラッキーなケースばかりとは限りません! 腹緊の他に、子宮口が開きかけていたり、出血や破水をしてしまった場合は そのまま早産してしまう確率がとっても高いんです。 症状によっては絶対安静と子宮収縮をおさえるための薬の投与などを行って できる限り早産にならないようにしなければなりません。場合によっては 子宮口の広がりを防ぐ手術(子宮頸管縫縮術)を行って早産をくいとめたりします 。
特に、切迫早産の中でも妊娠中毒症や多胎妊娠、子宮内胎児発育遅延、胎児奇形な どを合併している場合は医者にも高度な判断力が必要になり、帝王切開などの 手術に及ぶこともあります。切迫早産になったからと言ってすぐに落胆することは ありませんが、症状次第では危険な状態にもなってしまうので やはり早め早めに医師の診察を受けてくださいね。 なにしろすべての妊Pの3~6%が早産してしまうというのが現実ですから…。

2.どうして早産は起こるの?
 早産は運動することによってお腹が張って起こるとか、働き過ぎで起こるというのは間違いです。膣の中の細菌が増え、おりものが多い状態(膣炎)を放置しておくと炎症が子宮頸管の方へ進みます(子宮頸管炎)。すると炎症反応によって子宮口を軟化させたり子宮の収縮を促進する物質が生産され、お腹が張りやすくなり子宮口が拡がりやすくなります。この状態をさらに放っておくと子宮頸管炎がますますひどくなり、さらに炎症が子宮の中の方へ向かって進み卵膜にまで炎症(絨毛膜羊膜炎)が広がります。ここまで進むと炎症反応によりますます子宮口が軟化し、子宮収縮を促進する物質が増え、破水したり陣痛が起きたりします。つまり、早産は感染によって起こるのです。したがって早産対策としては膣分泌物の培養検査で菌を調べたり早産マーカー(顆粒球エラスターゼ、胎児フィブロネクチン)でチェックしておくと良いのです。おりものが増え、微熱が出たりしたら要注意です。すぐに受診して検査し、感染を防ぐ治療をすれば早産をさけることができます。

3.運動習慣は早産を予防する
 当院では20年以上分娩直前まで運動を行いますが、運動によって早産に至った人は一人もいません。私達の研究では運動する妊婦さんの方がお腹のはりは少ないので切迫早産で入院する妊婦さんも殆どいません。稀に真の切迫早産(子宮頸管不全症)がありますが、子宮口をしばってなるべく早く退院させますので切迫早産でも1週間以上入院する例はありません。

妊娠末期にはTPH-rP(副甲状腺ホルモン関連ペプチド)という物質が子宮筋に増加しますが、これは子宮の筋肉(平滑筋)の収縮を抑制する作用があり早産を防止するためであろうと言われています。私の研究では運動をよくする妊婦さんはこの物質が明らかに増加しているので、早産を防ぎたければ、妊娠初期から運動することをおすすめしています。

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切迫早産の発生時期

切迫早産の診断名で入院した73例(ある病院の三年間で)の入院時の週数を調査した結果、このように妊娠31~33週にピークがあり、破水や出血を伴わず腹緊のみを主訴として入院した切迫早産の症例に、腹緊の減少に応じて早期離床、早期退院、運動再開を励行しましたが、早産の発生はなく、分娩に際しては微弱陣痛や弛緩出血もみられませんでした。

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